概要

全期間を通じた研究交流目標

急激な変容を遂げるアジア地域の開発途上国では,気候変動に伴い頻発する自然災害,都市域と村落域の不均衡な発展,それに付随する貧困問題,都市居住環境の悪化,自然環境の劣化,地域レジリアンスの低下など,種々の問題が複合的かつ複雑に錯綜し広範囲に深刻化しています。この地球レベルと地域レベルの環境問題に対して,アジアの研究者が協働し,学際的・国際的学問としての先見性と深淵性を持った新しい「地球環境学」を探求するとともに,具体的問題を包括的に理解し,実践的研究から得られた知見を社会に還元・実践することが求められています。

京都大学大学院地球環境学堂・学舎は,従来の学問領域にとどまらず,異分野領域を融合あるいは既存専門分野の枠組みを超えた研究活動をおこない,地球環境問題解決のための学問体系確立を目指してきました。同時に,アジアにおける国際協働に重点を置き,特にベトナムではハノイ理工科大学,フエ大学(フエ農林大学,フエ科学大学),ダナン工科大学にて海外教育研究拠点オフィスを設置し,調査研究,人材育成,実践活動の実績を蓄積してきました。現在,その活動はベトナムからチャンパサック大学(ラオス),王立農業大学(カンボジア),コンケン大学(タイ)など,インドシナ地域の活力ある大学との協働へと拡大しつつあります。

しかし,ベトナムをはじめインドシナ地域の大学は社会経済発展に特化した単科大学が多く,異分野融合がとりわけ重要な地球環境課題の解決に向けては,各大学の協働が必要不可欠です。また,インドシナ地域は地勢的,文化社会的に共通する部分も多く,同地域の環境問題解決に資する知識・技術・経験則を共有することは非常に重要であり、実践技術やアプローチを探求することが求められています。

本事業では,多くの協働連携を実施してきたベトナムの3 大学(ハノイ理工科大学,フエ大学(フエ農林大学,フエ科学大学),ダナン工科大学)をインドシナ地域のハブと位置付け,当該地域における地球環境学連携拠点を形成し,教育・研究・実践の情報共有化,学際・国際的な人材交流の促進と共同研究の推進に資するインドシナ広域ネットワーク構築を目指します。

具体的には,

  1. 日本側拠点機関と6 海外拠点機関(ベトナム3 ハブ拠点、インドシナ3 準ハブ拠点)大学の研究者による共同研究チームを形成し,インドシナ地域に共通する環境問題をテーマに実践的研究を展開する
  2. ベトナムのみならずインドシナ地域への広域連携の拡大を見据え,学問領域,国家領域を超えた地球環境学連携のモデルを構築する
  3. インドシナの地域の「地球環境学」の確立を視野に入れた学際的,実践的研究を蓄積する情報基盤を整備する

ことを目標としています。

平成25年度研究交流目標 (Activities in AY2013)
「研究協力体制の構築」
 インドシナ地域における地球環境学連携拠点の整備・運営を円滑に実施するための地球環境学連携拠点委員会を設立します。本委員会は以下の3軸構成とします。

  1. 「フィールドの共有・相互理解に関するワーキンググループ」
    ベトナム拠点連携地域あるいはインドシナ広域連携地域に研究フィールドを設定し,ミニプロジェクトワーク,学際・国際共同研究等の実践的活動の創出
  2. 「人的資源の連携に関するワーキンググループ」
    異なる分野・地域からの研究者の連携を推進するため,セミナー,ワークショップ等の人的交流を促進し,人的資源の連携基盤の構築
  3. 「情報資源連携ワーキンググループ」
    インドシナ地域で共有すべき情報資源を効果的に共有・活用するための刊行物・Web データベースなどの整備

「学術的観点」
以前に学際研究として実施したベトナム・フエの沿岸部集落フンフォン社におけるフィールド調査では,人口の増加,生業の多様性,水路の水質悪化,洪水の災害リスク等が相互に連環しており,「暮らしと環境」に関わる問題が生活発展に起因する様々な要因の複合形として把握してきました。

また,近年の都市化や市場経済の拡大が,都市と農山漁村の地域格差や不均衡な発展をもたらし,加速する都市発展が農山漁村域の資源収奪的な生産活動を助長するなど,社会的問題として顕在化してきています。このような状況からも,本事業が目指す学際的・国際的共同研究は,インドシナ地域に共通する複合的な環境問題解決への理解に繋がる意義のあるものとなると考えます。

初年度は、ミニプロジェクトワークおよび共同研究としてインドシナ地域で共有しうる社会的課題を抽出し、ベトナム3 拠点における具体的なフィールド選定と相互訪問・視察を行います。

「若手研究者育成」
 人的資源の連携および情報資源の連携をめざして適宜研究セミナーを開催します。主にベトナム3 拠点に設置してある遠隔講義システムを用いることで,現地渡航をしてない研究者も含め効果的な相互連携を図ります。

初年度の主な内容は,研究者同士の相互理解,フィールドの相互理解,ミニプロジェクトワーク立案,共同研究立案に係る部分となります。主な参加者は,ベトナム3 拠点の研究者・大学院生および地球環境学堂・学舎の研究者・大学院生を予定しています。本事業で実施する情報ネットワーク構築に関するシンポジウムをベトナム3 拠点の一つフエにて開催します。日本から4名程度,ラオス,カンボジア,およびタイからそれぞれ1 名程度を目安に招聘します。このほか,ベトナムから日本への3 名程度の研究者招聘を行います(ベトナム各拠点から1 名ずつを予定)。