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地球益学廊

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地球環境政策論

宇佐美 誠 教授

国・自治体による環境政策や、環境関連条約、一般市民・NGO/ NPO・企業等の環境保全活動について、政治哲学・法哲学の観点 からの原理的研究と、社会科学的な分析装置による実証的研究とを 行う。研究対象は、グローバル・リージョナル・ナショナル・ロー カルという4つの層におよぶ。

原理的研究では、例えば、地球温暖化への緩和策・適応策の負担 は、国家間・個人間でどのように分配されるべきかについて、〈グ ローバルな正義〉という視角から探究している。また、温暖化や生 物多様性の縮減などの超長期的な環境問題について、現在世代と将 来世代の利害衝突を踏まえて、〈世代間正義〉の角度から環境政策 の原理的考察を進めている。国際環境法に関する法学的研究も行っている。

実証的研究では、環境政策の策定・執行過程や市民・NGO/ NPOなどの環境保全活動に関して、事例研究や比較研究、統計的 手法による分析を行う。また、政策分析のツールを用いて、政策案 の優劣比較や多角的評価も進める。さらに、これらの実証的知見を もとにして、規範的提言も試みる。

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環境経済論

竹内 憲司 教授

すべての環境問題は、人間の経済活動が原因となって起きます。したがって企業や家計の行動原理を理解することは、環境問題の発生構造を捉え、有効な解決策を提案するにあたってとても重要です。本分野では、経済学的な視点から環境問題について考え、有効な政策のデザインについて議論します。

【1】環境保全と経済発展
環境を保全しながら、経済を発展させることは可能でしょうか。これは持続可能な経済発展の実現にとって特に重要な課題であり、地球社会のあり方に対する本質的な問いを含んでいると言えます。本分野は、フィールド調査やミクロデータの計量経済学的分析を通じてこうした課題に挑戦します。

【2】廃棄物の経済分析
生産・消費された財はやがて廃棄される運命にありますが、廃棄過程に関する経済学研究は数が少なく、あまり注目を浴びてきませんでした。廃棄物の発生を抑制し、リサイクルを促進するにあたって、経済的インセンティブを用いた政策はどのような効果を発揮するでしょうか。こうした問いに答えるには、地道なデータ収集と因果推論を踏まえたデータ分析が不可欠です。

【3】環境の経済評価
環境の価値が市場で無視されていることは、すべての環境問題の根本原因とも言えます。では環境の価値を貨幣の単位で評価することは、果たして可能でしょうか。本分野では、表明選好や顕示選好のアプローチを用いることで、この困難な課題に取り組んでいます。

地球益経済論

森 晶寿 准教授

環境経済・政策学のこの30年間の発展が示したことは、環境問題の解決には、個別の環境保全型技術や環境保全を促す政策の導入だけでなく、人間の活動基盤を構成する社会経済システムそのものを持続可能なものに移行することが不可欠なことである。しかし現実には、社会経済システム、特に大規模なインフラは社会に深く埋め込まれ、生産や消費に習慣化されているため、短期間で技術的にも制度的にも代替的なシステムに移行させることは容易ではない。

この問題意識から、地球益経済論分野は、主に経済学の観点から、持続可能な社会経済システムへの移行(Sustainability transition)を、国内外の持続可能なエネルギー・交通・都市・農業等の事例分析に基づいて研究している。具体的には、これまで国内外で実施されてきた事例の「新規性とレジームとの共進化分析枠組み」等を用いた定量・定性分析や、政策・制度変更による将来の炭素排出や経済状況のシミュレーション分析を通じて移行を容易にする要因を特定し、実践するための方策をフィードバック効果に着目して検討している。同時に、化石燃料投資からの撤退やグリーンボンド等、金融が持続可能な社会経済システムへの移行に果たす役割の分析にも着手している。

さらに、中国が主導する一帯一路戦略を通じた投融資が、途上国の持続可能な社会経済システムへの移行に決定的な影響を及ぼしうることから、その投融資の環境・経済評価も同様の方法を用いて行っている。

なお、当分野は、京都大学未踏科学研究ユニットの持続可能社会創造ユニットに参画している。(http://rurss.iae.kyoto-u.ac.jp

持続的農村開発論

武山 絵美 教授
鬼塚健一郎 准教授
東口 阿希子 助教

農村地域の持続性(Rural Sustainability, RS)は、定住人口の再生産を中心にして、物財の再生産、社会と組織の継続、自然・生態系の保全、地域文化の継承の5つの要素が地理的に限定されたフレームの中で調和することにより維持されてきました(図参照)。これらの構成要素はいずれも地域性を備えたものであることから、RSも地域固有の特徴を備えたものになります。

しかしながら、近年、過疎・高齢化や経済のグローバル化、そして気候変動や過度の人為的開発などの影響を受けて5つの要素は変質し、その結果、農村地域は様々な課題に直面し、RSも大きく損なわれつつあります。

持続的農村開発論分野では、農村計画学的な視点から、かかる課題の解決とその先にある地域固有のRSを再建するために制度・政策の設計と評価に取り組んでいます。具体的な研究内容は、ナレッジマネジメントによる地域資源管理、ソーシャルキャピタル(SC)と地域力の再生、居住環境と野生動物との共生、地域情報化による地域活性化、住民主体型コミュニティ計画論の確立、人口減少社会における地域再編と社会資本整備の在り方など多岐にわたっています。

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水環境保全論

藤原 拓 教授
日髙 平 准教授
野村 洋平 助教
川口 康平 特定助教

健全な水環境の創出と持続可能な地域の創造を同時に実現するには、流域内の人間活動により発生する廃水や廃棄物に含まれる有害物質を適切かつ効率的に処理するとともに、同時に内在する資源やエネルギーを回収して付加価値を創出する、経済・社会・環境が一体となった持続可能な水管理システムを構築する必要があります。また、人間の生存に不可欠な資源である水・エネルギー・食料の連環に加えて気候変動も考慮した、未来の循環社会システムの構築が期待されています。

本分野では、フィールド調査により水環境の現状評価および汚濁機構の検討を行うとともに、汚濁負荷となる生活排水や農業排水から価値を生み出す新しい水処理システムの開発を行います。研究の遂行にあたっては、農学、水産学、地域研究等の他分野との連携および産官学の連携を重視し、学術としての水環境保全論の深化と地域への実装の両面を大切にしたいと考えています。具体的な研究テーマの例は以下の通りです。

1  微量有害物質による水環境汚染の現状評価と対策技術に関する研究

2  汚水処理施設からの温室効果ガス排出量の削減技術に関する研究

3  都市代謝系と沿岸生態系が融合した循環型エネルギー・食料生産システムの構築に関する研究

4 施設園芸の低炭素化と資源循環に寄与するカスケード型養液栽培システムに関する研究

本分野は、京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻水環境工学分野に併任所属しており、桂キャンパスにおいて工学研究科所属の大学院生とともに研究活動を実施しています。

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歴史地理文化論

山村 亜希 教授
徳永 悠 准教授

本分野は、歴史学・地理学を基盤として、現代の文化・社会・環境的課題の要因や仕組みを理解するとともに、地域の課題を解決する方法や、地域空間の環境的価値や潜在的な魅力を見出す歴史学・地理学の視点を習得する。

グローバルなモノ・人の動きが加速し、世界の諸地域が相互に急速かつ緊密に結ばれつつある現代において、土地固有の自然・人文環境に根差した地域の個性は失われつつあり、文化や社会の均一化が進みつつある。しかし、地域において長きにわたる歴史の中で、自然と人間との相互作用を通じて形成された文化的景観や文化交流、思想、社会関係は、現代においても根強く機能している。現代地域における文化・社会・環境的課題を本質的に理解するためには、地域間の「ヨコ」の構造とともに、地域の歴史地理・文化といった「タテ」の構造も考察することが必要である。

本分野では、歴史史料・古地図、文化的景観・遺産の分析を通じて、地域の空間・社会構造を考察し、その上で現代の諸問題にアプローチする視点・方法を探求する

環境マーケティング論

吉野 章 准教授

環境の外部不経済性を超えて、持続可能な社会を築いていくためには、社会の全ての構成員が、環境と調和することの意義を、自らに内部化していかねばなりません。企業の環境配慮活動の成果を企業経営に内部化できるのか、また、それを支える消費者の価値観の転換は可能なのか。資源節約を求める環境問題と売買を促進するマーケティングとは相反するように思えますが、マーケティングは、新たな価値観やライフスタイルを「売る」ための方法論でもあります。環境マーケティング論分野では、持続可能な社会に向けて以下の研究に取り組んでいます。

  • 環境への取り組みを軸とした企業の市場戦略:
    CSR活動を超えた企業の差別化戦略、防衛戦略、環境ブランド戦略
  • 企業と消費者の環境コミュニケーション:
    環境ラベル・環境認証制度、環境リスクコミュニケーションの理論と評価
  • 環境に関する消費者の意識と行動:
    環境意識による消費者セグメンテーション、環境活動の消費者行動分析、環境配慮製品の購買行動分析
  • 環境配慮型農業の可能性:
    環境配慮農業の実態分析、市場戦略のあり方、市場動向分析、消費者分析
  • 食品リスクコミュニケーション:
    リスクコミュニケーションの理論、消費者のリスク認知とリスク回避行動の実態分析、食品安全政策の評価

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美術史・文化論

高階絵里加 教授

本研究分野の目的は、日本の近代を中心に、美術作品の創造と受容の諸相を歴史的文脈において理解し、作品の歴史的意義、そして作品と人間個人の内面あるいは社会との関係を明らかにしようと試みることにあります。

そこでめざすことは、
1)美術作品の生成過程に及ぼす伝統や異文化の影響と造形表現とのかかわり、たとえば西洋の美的価値と日本の美意識の共存・融合・相克の問題について考察し、
2)近代世界において自然や社会を美術がいかに表現しようと試みたのかを、歴史的な伝統とその革新の面から明らかにし、
3)美術が社会環境の中でどのように受容されたのかをさぐってゆくことです。

人間をとりまく社会や自然の環境が大きく変化した近代の日本においては、美術作品そのものに加えて、それを受容する場もまた、変容せざるを得ませんでした。作品一点一点は、芸術の伝統を受け継ぎ、時代の思潮や社会の移り変わりのなかで時には思いがけない斬新な表現を獲得し、また社会や個人にはたらきかけます。現在残された作品を後世に伝えてゆくためにも、作品からの声に耳を傾け、その歴史的位置づけと意味を解き明かしてゆくことが重要であると考えます。

環境教育論

トレンチャー・グレゴリー 准教授
バース・ロジャー 講師
安藤 悠太 特定助教

本研究分野における研究教育活動は、大きくわけて(1)資源循環や持続可能なコミュニティのための教育や社会実践、(2)エネルギーやサステナビリティ転換のガバナンス、(3)気候変動と災害への備えの3テーマから成る。研究室や所属学生は、研究やインターンシップ、協働教育活動を通じて、公正で持続可能な社会の実現に向けた意識向上や行動変革につながる、コミュニティに根差したユニークな手法を開発・展開している。

一つ目のテーマでは、物質循環や持続可能なコミュニティの実現に向けた研究を進めている。特に、食品ロスやプラスチック、災害廃棄物などを含む都市ごみや、持続可能な(SDGs達成に向けた)コミュニティや暮らしの在り方に着目している。フィールド活動を重視しており、キャンパス、京都、国内他都市の他、アジア、大洋州、アフリカ等の途上国など広範に及ぶ。

二つ目のテーマでは、公共政策や法律、制度設計、ビジネスモデルといったガバナンス手法をどのように活用すれば、低炭素技術の生産・普及、および、持続可能な社会の実現を促進できるかについて取り組んでいる。方法論としては、公共政策、サステナビリティ・トランジション、イノベーション論、政治学、経済学、人文地理学などを含めた多種多様な学問領域から示唆を受けた独自性の高い分析的枠組を構築し、データ主導型の実証的研究を主に行っている。

三つ目のテーマには、気候変動に関する教育と適応、持続可能なライフスタイルへの新しいアプローチ、社会変革、行動変容、災害への備えとレジリエンスに関するプロジェクトが含まれます。プロジェクトは主に日本、ヨーロッパ、南太平洋(オーストラリアとニュージーランドを含む)でのフィールドワークに焦点を当てています。